【特別寄稿】2019アラスカ・キングサーモン釣行


期間:2019年7月19日(金)~27日(土)
場所:アメリカ・アラスカ州

<オーパ!とクラブ・オーパ!>
開高さんの「オーパ、オーパ!!」を手にしたのは19の時でした。コスタリカ篇の「キ〇タマのある男ならターポンを釣りに行け」を真に受けて中米へターポンを釣りに行くなど、大学の4年間は開高さんの影響で海外釣行に明け暮れました。

就職後に「Lure & Fly Fishing Club OPA!」に入会させていただいたのもクラブ名称に惹かれてのことでした。メンバーとサクラマスやアカメなど魅力的な魚を追い求め、またタックルの進化とともにこれまでルアーのターゲットではなかったアオリイカや鯛をエギングやタイラバで狙って釣ることに熱中しました。

開高さんがアラスカへ初めて釣行されたのが39歳、クラブの会長・佐々木さんがハリバット釣行に行かれたのが40代半ば。開高さんに縁のあるクラブのメンバーとして、私もそろそろアラスカ世代かな?ということで、長年夢見ていたアラスカ釣行を今年ようやく実現できましたが、「オーパ、オーパ!!」を読んでからちょうど四半世紀が過ぎていました。


<アラスカでキングは釣れない?>
 近年、アラスカではキングが釣れなくて、ロシアへ釣りに行くアラスカの人もいるそうです。また、今夏のアラスカは猛暑で氷河や凍土が溶けたため、川は濁流と化し、雪代と共に遡上するはずのキングは、川のはるか下流で待機している状況でした。「オーパ、オーパ!!」を読んで知った、例年7月第2週ごろの巨大キングの遡上「セカンド・ラン」に照準を合わせた釣行でしたが、これまた開高さんの本でたびたび目にする異常気象にまんまとひっかかってしまいました。



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キングの遡上が少なく、釣りができるポイントも限られたため、現地ガイドはキャッチできる可能性の高さから餌釣りを強く勧めました。アラスカのキングを釣りたい一心から、ルアーへのこだわりを諦め、ここはガイドの指示を素直に受け入れることにしました。



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<シンプルで考え抜かれたリグ>
 障害物が多い川のため、主導権を握ることができるようにタックルはパワーを重視しました。ロッドは7フィート半のワールシャウラのパワー4、リールは巻き取りスピードとドラグを重視してツインパワーの8000H。ラインはPEの10号で、リーダーは100ポンド。ほぼ大型青物を狙う仕様です。

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ガイドが用意してくれたリグはアラスカ独特のものでした。メインラインとリーダーはヨリ戻しで結び、本来切って捨てるはずのリーダーの結びシロに、ちょうどリーダーを通せるほどの穴があいた細長い棒状の鉛シンカーを通し、噛み潰して固定しました。フックは5/0でその前に玉ウキを付け、餌はパウダーで固めたイクラをみかんネットで包んだものを使用しました。



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キングは遡上すると底付近に定位するため、餌を確実に目の前へ通さないと口を使いませんが、このリグならシンカーがボトムを叩き、フックは玉ウキで底から浮き上がり、ちょうどキングの目の高さに餌を流せます。シンプルですがよく考え抜かれたリグは、根がかりが少なく、根がかってもシンカーがリーダーから滑って抜け落ちるだけでフックを失うことがない優れものでした。

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<攻略が難しい激流>
ただ、いざ釣りを始めると、ラインとリーダーが太いため、少しでもラインテンションが緩むと水の抵抗でリグが浮き上がり、底を取ることができません。ガイドからダメ出しを受けながら、ラインが流れを拾わないように、キャスト後は素早く糸ふけを取り、手を頭上に伸ばしてロッドを高くかかげ、水面へできるだけ直角に近い角度でラインを入るように工夫しました。



急流の釣りはサクラマスで多少自信がありましたたが、アラスカの川の流れの速さや強さは九頭竜の比ではなく、慣れるまで時間がかかりました。

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<念願の初キング>
 餌釣りでも魚信は遠く、アタリもかすりもないまま2日が過ぎました。3日目の早朝、雪代で濁った水面を深紅の巨体がゆっくりと割りました。キングのライズです。冷静にライズがあった場所の少し上流へリグを投入すると、小さなアタリを感じました。反射的にフッキングを入れると全身に強い衝撃が走り、キングであることを確信しました。流芯に入られないようにドラグを締め、両足で踏ん張って走りを凌ぐと、キングは水面付近で大きく反転しました。その鮮やかな紅色に目を奪われた次の瞬間、無情にもテンションが抜けました。事前にガイドから「フッキングはロッドを下流に向けて強く入れろ」と言われ、イメージどおり決めたはずでしたが甘かったのでしょう。



 次のチャンスは意外にも早く、近くのポイントで再び別のキングがライズしました。ようやく遡上が始まったのかもしれません。今度もライズの少し上流にリグを投入し、アタリをとらえると先ほどの反省を踏まえて、力強く何度もフッキングを入れました。サイズがあまり大きくなかったことから走り回られることもなく、無事にキャッチできたキングは約1mのメス。ガイドの見立てでは18ポンドでした。リリースするため、ルールどおりキングを水面から上げないように注意しながら数枚撮影してもらいました。


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<奇跡の2匹目>
 この川の釣りは、ロッジ近くの町の橋から14マイル上流に上がった場所でゴムボートを下ろし、ラフティングで移動しながら目ぼしいポイントを巡るスタイルです。3日目までは増水でキャストできる場所は限られましたが、最終日の4日目は水位が低下し、ようやく複数のポイントに立つことができました。

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 小場所をチェックしながら、初日にも入った岩の前で大きく流れがカーブするポイントにたどり着きました。ここは遡上した魚の休憩に適した緩やかな流れと深さがあります。この日はソッカイ(ベニザケ)のライズが数多く見られ、初日とは違った雰囲気でした。



 岩の上に立ち、セオリーどおり流芯の両脇を流すも反応がありません。諦めずにしつこく流し続けていると、流芯でキングがライズしました。すかさず狙いの場所にリグを投入するとキングのひったくるようなアタリがありました。最初のランで昨日よりサイズが大きいことが分かりましたが、幸い魚が手前の流芯脇に寄ってくれました。あのまま流芯を走られたらたぶん寄せられなかったでしょう。安堵したのも束の間、足元を流していた同行者が私のヒットに気づかず、リグの回収が遅れて絡んでしまいました。万事休すかと思われましたが、ラインは切れることなく持ちこたえてくれました。メーターオーバー、38ポンドのメスのキングでした。正直、アクシデント以降の記憶は薄く、キャッチできたのは奇跡としか言いようがありません。

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<河は眠らない>
 アラスカ釣行を前に、昨夏、わたしは銀山湖を訪れました。村杉小屋で在りし日の開高さんの話を伺い、北ノ股川の畔に立つ「河は眠らない」の碑を見ました。



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「あの河で釣った魚を逃がしてやった。今もう何十世代目がのぼってきているんでしょう、河に。だから、あの河は私の中で生きている。」
わたしがキャッチできた2匹のキングは、開高さんが提唱されたキャッチ&リリースの精神に従って川に放しました。河がわたしの中で生き続け、わたしがリリースしたキングの子孫がいつの日か誰かに感動を与えてくれることを願って。

以 上

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